
Interview
2024/04/01
暑苦しいほど愛ある経営を。
Interview
2022/04/01
GUEST
プロ卓球選手
吉村 真晴
卓球は気軽に楽しめ、高齢者の認知症予防にも
吉村 真晴(よしむら まはる)1993年8月3日生まれ。茨城県出身のプロ卓球選手。父の影響で小学校から卓球を始めた。2016年のオリンピック・リオデジャネイロ大会では、団体で日本男子初となる銀メダル獲得に貢献。2017年の世界選手権では、石川佳純選手と組んだミックスダブルスで1969年以来の金メダルを獲得。ITTF世界ランキング最高位は15位、段級位は9段。愛知ダイハツ所属。Tリーグは琉球アスティーダ所属。
INTERVIEWER
株式会社EP綜合 代表取締役
山本 賢一
山本 賢一(やまもと けんいち)1974年2月8日生まれ。近畿大学商学部卒。両親が製薬会社勤務だったため、医療業界に興味を抱く。治験を通して病気の方の役に立ち、社会貢献できると考え、SMO業界に入社。2019年10月、株式会社EP綜合 取締役 社長代表執行役員就任、EPSホールディングス株式会社 執行役員就任。2020年4月、株式会社EP綜合 代表取締役に就任、現在に至る。趣味は卓球観戦、ツーリング、バスケットボール。
山本
私は卓球ファンなので、今日の対談を楽しみにしていました。まず、吉村さんにとって卓球の魅力とは何かを聞かせてもらえますか?
吉村
卓球は老若男女問わずみんなで楽しめるスポーツです。柔道のように階級の差がなく、体重差による有利不利がないことも魅力だと思います。競技者の目線から言うと、若いうちから世界で活躍できるチャンスがあり、30~40代になってもトップを目指せるところですね。山本さんは、卓球のどんなところが好きですか?
山本
ファン目線で言うと、点を取り合うテンポの速いところが、見ていて面白い。試合中のスピーディな応酬の中で、先を読んだり戦術を考えたり、とても頭を使うスポーツだと思います。
吉村
深い所までご存知ですね。僕がそれを言えば良かった(笑)。
山本
あのスピードの中で頭を使えるのは、本当に驚くべきことだと思います。
吉村
確かにかなり頭を使います。瞬時に球の回転を見極め、体の向きやスタンスで相手の動きを先読みして。素早く動きながら将棋を指しているようなもので、かなりの集中力が必要です。高校生の時は、試合の次の日によく熱が出ていました。試合に集中しすぎて頭がショートしてしまうような感じです。今でもいますよ、試合が終わって頭が痛くなる選手。
山本
本当に心・技・体・知のスポーツなんですね。
吉村
そうですね。極めると奥が深いものの、一般の人にも入りやすいという側面もあります。
山本
なるほど。運動が苦手でも「やってみよう」となりやすい。気軽に楽しめるのも魅力ですね。
山本
普段どんなトレーニングをしていますか?
吉村
卓球の練習はもちろん、ウエイトトレーニングなどもやります。そのほか俊敏性を鍛えるアジリティ系、瞬発力を高めるジャンプなどのブライオ系、少しの休憩を挟みながら繰り返すインターバルトレーニングなど、いろいろと行っています。
山本
目的に応じてトレーニングを組み立てているわけですね。1日の大まかなスケジュールは?
吉村
午前中は卓球の練習をして、午後はトレーニングにあてています。
山本
日々の練習やトレーニングで心掛けていることは何ですか?
吉村
限られた時間の中で、最大限のモチベーションを持って成果を出すこと。モチベーションが下がらないように、常に「楽しい」という気持ちを維持しつつ、全力で取り組むことです。
山本
量より質を重視ですね。
吉村
若い頃、卓球の練習量を増やしすぎていたことがありました。その結果、だんだん集中力を欠いて練習の質が低下していったのです。だから今は、卓球の練習は午前中だけと決めています。その中でテーマを決め、今日はこの技術を磨くとか、目標を定めて練習をするようにしています。
山本
いろいろ試した結果、自分にとってベストなトレーニング法を見出せたのですね。
山本
フィジカルな面や技術的な面についてお話いただきましたが、メンタル面で不調になったことはありますか?
吉村
はい、あります。2016年のリオデジャネイロオリンピックの団体で銀メダルが取れて満足してしまい、そのあとモチベーションが下がってスランプに陥りました。
山本
燃え尽き症候群のような状態ですか。
吉村
ええ、周囲から称賛されて満足し、達成感に浸っていました。これじゃいけないと思い、今度はムリして頑張るように。すると、「やらなければいけない」という仕事感覚になってしまって。卓球を楽しむ気持ちを忘れてしまい、練習の質も下がる一方。悪循環に陥って結果も出せず、東京オリンピックの代表から落ちてしまいました。
山本
そのあとですね、第一線から退くことを発表されたのは。ファンとしてはショックでした。
吉村
代表落ちを聞いた瞬間、張りつめていた糸がプツンと切れたのがわかって。こんな気持ちではサポートメンバーもできないと思い、ナショナルチームから離れ、距離を取りました。自分を見つめ直して整理したいと思ったのです。
山本
ナショナルチームを離れたものの、選手としての情熱は失ってはいなかった。
吉村
はい。今でも覚えているのが、ナショナルチームを離れる宣言をした翌日の練習。開放感からか、体がとても軽く、驚くほどよく動けた。卓球が楽しくて、まだまだ強くなれるぞと感じました。
山本
決断がプラスになったのですね。
吉村
卓球の楽しさを思い出し、モチベーションも高く保てるようになりました。一度離れて良かったと本当にそう思います。
山本
東京オリンピックでは、サポートメンバーに入りましたね。
吉村
1年延期もあり、自分を待っていてくれたのかなと。スパーリングパートナーとして参加して、会場でもサポートしました。オリンピックの会場に立ったことでモチベーションも一層高まりました。改めて世界のレベルを目の当たりにし、ただ「凄いな」ではなく、悔しさを感じました。それを感じられたのは、まだまだ自分は上に行ける証だろうと。次のパリ大会に向けての決意が固まりました。
山本
先ほど、卓球は頭を使うスポーツという話が出ました。また、吉村さんの話から、挫折を乗り越える心の強さも感じましたが、メンタルや集中力を鍛えるトレーニングもされていますか?
吉村
月に1回、メンタルトレーニングのドクターのもとで行っています。
山本
やはり心・技・体・知の心の部分にも力を注いでおられるのですね。どんな時にメンタルトレーニングが生かされますか?
吉村
この技でミスをしたらどうしよう、などと先に結果を思い浮かべてしまうと、その時点で失敗する可能性が高まります。それはどんなスポーツでも同じだと思うのです。ドクターは「ご機嫌でいることがとても大切」と言います。ご機嫌でいると楽しい、人が寄ってくる、いいアイデアが生まれる、苦しいことにも挑戦できる・・・良いことずくめです。
山本
なるほど、ご機嫌の価値は大きいと。
吉村
ご機嫌と調子の良さはつながっています。だから今は、いかに自分をご機嫌にするかを日々考えています。僕は「いま、ここ、じぶん」という言葉を大切にしていて、自分をご機嫌にして目の前の1本に集中するようにしています。要は心の健康維持ですね。社長業もハードワークだと思うのですが、やはり心の健康維持は大事にされていますか?
山本
私も無意識のうちにご機嫌でいようとしているかもしれません。常にマイナスには考えないようにしているので。くよくよしても仕方がない。プラス思考で。それにしてもプロのアスリートのメンタルは桁外れだと思います。心から尊敬します。
吉村
社長業はお忙しそうに思えるのですが、健康には気遣っておられますか?
山本
社長業にとって必要なのはリーダーシップとか先見性とか言われていますが、私は健康こそが最も大事だと思っています。タバコは吸わないし、休日やプライベートでもお酒はほとんど飲まないですし、健康診断で引っかかったこともありません。吉村さんはアスリートなので、健康への意識は高いのでは?
吉村
自分の生活リズムを守ることを意識しています。あと睡眠ですね、休むことも仕事のうちだと思っています。活動と休息のメリハリをつけることが大事です。山本さんは運動もされるのですか?
山本
習慣にしているのはウエイトトレーニングくらいです。
吉村
いいですね!
山本
先ほど心の健康維持の話をされましたが、体の健康維持は病院で?
吉村
はい。ナショナルトレーニングセンターで体を見てもらっているのですが、そこからの紹介で、病院で高気圧酸素治療を受けに一時期通っていました。何か症状が出る前に体をケアして、いつも万全な状態でいたいと思っています。
山本
それは素晴らしい。症状が出る前の予防として、今、ゲノム治療が注目されています。遺伝子によって将来どんな病気になるリスクがあるのか、ある程度予測できるので、その病気になる前にケアをして健康を保つ。病院もだんだんそちらの方向にシフトしていくのではないでしょうか。今後は弊社でも、ヘルスケア分野に一層力を入れていきたいと考えています。
吉村
病院といえば、僕は病院で高齢者などに卓球を教え、リハビリや認知症対策に役立てる活動に取り組んでいます。病院プロジェクトとして、今後力を入れていきたいと思っています。
山本
いいですね。最近は機能訓練のために卓球療法を取り入れている病院もあります。2030年には人口の1/3が高齢者になると言われている中、卓球は老若男女問わず楽しめるスポーツなので、医療とのコラボレーションには可能性を感じます。
吉村
以前、小児科を訪問したことがあり、子どもたちと一緒に卓球を楽しんだり、写真を撮ったり握手したり、とても楽しい時間を過ごしました。卓球を通じてみんなが笑顔になってくれたことに感動しました。
山本
立派な活動ですね。そういった活動を引退後ではなく現役中に行われていることにも頭が下がります。
吉村
現役ならではの意味があるのです。子どもや高齢者に卓球を教えることで、自分自身が刺激を受けて頑張ろうと思ったり、みんなの応援を受けてモチベーションが上がったり。それらを現役であれば練習や試合にぶつけることができますから。
山本
吉村選手が活動されることで、人々に力を与え、ご自身のモチベーションアップにもつながる。お互いにプラスになりますね。今日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。2024年のパリ大会を目指してぜひ頑張ってください。
日本初のプロ卓球リーグ・Tリーグでは琉球アスティーダのキャプテンを務め、その実力とパフォーマンスに加え丁寧なファンサービスで人気を博する吉村選手。
パラ卓球のイベントに協力し、日本で開催された国際大会にも足を運ぶなど、パラ卓球にも興味と理解を持ち、2020年4月よりパラ卓球アンバサダーに就任しています。また、卓球を通じてさまざまな人たちを支援する活動にも意欲的に取り組んでいます。
1月24日~30日に東京体育館で行われた2022年全日本卓球選手権大会では快進撃を見せ、復調を印象付けました。(写真)
2022年全日本卓球選手権大会では男子シングルスで3位に。鈴木李茄選手と組んだ混合ダブルスでは準優勝に輝きました。