
Interview
2024/04/01
暑苦しいほど愛ある経営を。
Interview
2023/02/01
GUEST
ダンサー
SAM
高齢者の健康長寿を、ダンスを通じて楽しくサポートしていく
SAM(サム)1962年1月13日生まれ。ダンサー、ダンスクリエイター。ジェロントロジスト、美齢学指導員。1993年、TRFのメンバーとしてメジャーデビュー。多数のアーティストの振付、コンサートプロデュースを行い、ダンスクリエイターとして幅広く活躍中。2016年には一般社団法人ダレデモダンスを設立、代表理事に。誰もがダンスに親しみやすい環境を創出し、全世代へのダンスの普及に力を注いでいる。2021年、南カリフォルニア大学デイビススクールジェロントロジー学科通信教育課程修了。
INTERVIEWER
EPSホールディングス株式会社 社長代表執行役員
長岡 達磨
長岡 達磨(ながおか たつま)1961年8月8日生まれ。1995年、株式会社イー・ピー・エス東京(現イーピーエス株式会社)入社。2018年、株式会社EP綜合代表取締役社長およびEPSホールディングス株式会社上席執行役員就任。2019年、株式会社EP綜合代表取締役会長およびEPSホールディングス株式会社常務執行役員就任。2020年、EPSホールディングス株式会社取締役社長代表執行役員就任、現在に至る。
長岡
初めまして。SAMさんのプロフィールを拝見しますと、1962年1月生まれなんですね。私は1961年8月生まれなので同学年です。
SAM
それは奇遇ですね、よろしくお願いします。
長岡
SAMさんのお父様はさいたま市岩槻区の「丸山記念総合病院」創設者で医者の家系とのことですが、医療機関のご子息は後を継いだり医学の道に歩まれたりするパターンが多い中、ダンスの道に進まれたのはどんなきっかけだったのですか。
SAM
僕は5人兄弟で、次男なのですが、幼い頃から医者の道に進むことを念頭に育てられました。上に医学部がある中学・高校に進学しましたが、勉強が嫌いで体を動かすことは大好きでした(笑)。それで、中学3年の時、将来についてじっくりと考えてみたんです。親の引いたレールに乗ったままでいいのか、本当に医者になりたいのか。いや、もっと自由なことをやりたい!そういう想いが溢れてきました。
その頃、学校ではディスコに通っている友達がダンスを披露していて、輝いて見えた。だんだんディスコに興味を持つようになり、彼に連れて行ってもらいました。あれは高校1年の時でしたね。
長岡
ディスコ、流行っていました!『サタデーナイトフィーバー』の時代ですね。初めてのディスコはどんな印象でしたか?
SAM
衝撃を受けました。上手な人が踊ると、その人を囲んで周りに輪ができて、スターのようでした。それ以来、ディスコに夢中になってしまい、学校にもあまり行かなくなりました。僕の部屋は2階で、毎晩夜中にこっそり窓から抜け出してディスコに通っていたんです(笑)。
長岡
高校生の時からダンスへの情熱が強かったのですね。
SAM
ディスコ通いが発覚して家出もしました。2週間くらいで先輩に説得されて戻ったのですが、その時初めて父親と腹を割って話しました。「お前はどうしたいんだ」と聞かれて「自由になりたい。学校も辞めて好きなことをやりたい」と言いました。そうしたら「未成年なので、それは許せない」と。ただ、「毎日学校に行って、毎日居場所を伝えてくれれば、あとは自由にしていい」と言われたんです。それからは毎晩ディスコに通いながら、高校はちゃんと卒業しました。卒業後はもう、ダンス一筋。ニューヨークにもダンスを学びに行きました。帰国後、フジテレビの『ダンスダンスダンス』という深夜番組に出て、番組を見ていた小室哲哉さんから声が掛かってTRFでデビューとなったわけです。
長岡
ところで、SAMさんは最近、アメリカの南カリフォルニア大学デイビススクールでジェロントロジーを学ばれたそうですね。ジェロントロジーは日本では加齢学とか老年学などと訳されていますが、この学問との出会いを教えてください。
SAM
きっかけは『ダレデモダンス』でした。10年前に遡りますが、TRF20周年の時に、TRFとして初めてエクササイズDVDを出したんです。ある夏祭りでそのDVDを使って市民にダンスを教えるというお仕事がありまして。グラウンドでお年寄りも一緒に楽しんだのですが、そのイベントを僕の従兄弟が見に来ていました。彼は病院を経営していて循環器系の医師でもあるんですが、その彼からイベント終了後、こう持ち掛けられました。「僕は心臓のリハビリに関わっていて、継続的にリハビリで使えるものを探しているがダンスはとてもいいと思う。何か一緒にできないか?」と。僕は50歳になり、ちょうどその頃、健康維持のための高齢者向けダンスに興味を持ち始めていたのです。そこで、彼の病院から高齢の患者さんを20人集めてもらい、毎週彼の病院に行ってダンスを教えることにしました。
長岡
その20人の方々は、何か基準があって選ばれたのですか?
SAM
心臓疾患がある方、手術した方、通院中の方、高齢の方という感じですね。心臓疾患がある方でも安心して行えるプログラムであれば、万人に対応できるだろうと考えました。最初は不安そうだった高齢者の方々も、終わる頃はみなさん笑顔で、すごく楽しかったと言っていただきました。これを毎週続けて、プログラムを一つひとつ作っていきました。
長岡
リハビリの一環から生まれたわけですか。
SAM
ええ、血圧などの様々なデータを収集し、運動強度も測り、理学療法士の方からもアドバイスをいただきながら進めていきました。こうやって『ダレデモダンス』が完成していったのです。
長岡
ダンスと医療のタッグですね。
SAM
何年か経ったある時、事務所のスタッフが、「SAMさんの『ダレデモダンス』は、『ジェロントロジー』という学問と考えが近いのでは?」と教えてくれました。調べてみると、ポジティブに年齢を重ねることを学ぶ学問なんですね。興味がわき、ジェロントロジーの研究が盛んな南カリフォルニア大学の通信課程で1年半ほど学び、修士課程を修了しました。もともと勉強嫌いだった僕が60歳手前で勉強なんて、ちゃんとついていけるかと心配でしたが、意外と苦痛ではありませんでした。むしろ学ぶことの面白さを感じましたね。
長岡
日本の総人口に占める割合が最も多い、いわゆる「団塊世代」の人たちがみな後期高齢者の75歳に到達するのが、2025年です。2025年問題と言われており、超高齢化社会の到来です。国民医療費はどんどん高くなり、直近のデータでは年間44兆円を超えました。こうした時代ですから、いかに病気にならないよう心掛けるかという部分に日本社会はもっと力を入れるべきでしょうね。
SAM
『ダレデモダンス』もジェロントロジーも、予防医学の一端を担えるものだと思います。最近、懐かしの曲で踊る『リバイバルダンス』というプログラムも作りまして、これは認知症に備えることが大きな目的なんです。
長岡
素晴らしいですね。実は現在、認知症には特効薬がありません。SAMさんが取り組んでいるように、運動機能が脳への活性を高めるという視点から、認知症を予防していくことが効果的かもしれませんね。
SAM
ヘルスケアについていろいろと調べていくと、最終的に"適度な運動が一番いい"ということに行き着くんです。筋力は100歳になっても鍛えた分だけ強くなることをジェロントロジーで学びました。何歳から始めても遅くない。それを伝えていくことが僕の使命だと思っています。
長岡
60歳でも遅くない(笑)。
SAM
もちろんです(笑)。
長岡
活動の広がりはいかがですか?
SAM
現状では、地元・岩槻での定期的なワークショップの他、約15ヶ所のカルチャーセンターなどにインストラクターを派遣しています。様々な団体から呼ばれて日本各地に行くこともありますが、目下の課題は「点」で終わってしまうことですね。
長岡
一度きりではなく、サステナブルな活動にすることは大事ですね。
SAM
実は、小児がんの子どもたちを音楽の力で勇気づけるというチャリティーイベントにも参加しています。TRFの元チーフマネージャーの息子さんが小児がんになったのですが、ドクターとの奇跡的な出会いなどがあり、今は大学生に成長しています。そんな彼が始めたイベントで、僕もその趣旨に共感して参加させてもらっているんです。EPSさんにもご賛同いただきまして、ありがとうございます。次の開催が4回目ですが、これなども本当にサステナブルな活動にしていかなくてはと思っています。
長岡
SAMさんはダンスを通じて、予防の啓蒙や運動の習慣化を広める挑戦を続けていますが、プライベートでは何か挑戦をされていますか?
SAM
僕はスケボー(スケートボード)世代なんですが、いつかやりたいなと思っていて、ついにスケボーを買って始めました。
長岡
それはすごい!
SAM
それと、プライベートではないですが、3年ほど前に能楽を始めました。ずっとダンスをやってきたのに、日本の伝統舞踊を知らないのは何か違うなと思って、研究をし始めたんです。タイミングよく雑誌で能楽師の方と対談をする機会があり、仲良くなって、弟子入りさせていただきました。57歳で初めて能の世界に入り、人からものを教わるということを久しぶりに体験しました。僕のダンスの生徒たちの気持ちが初めて分かったような、新たな発見がありました。
長岡
医師が病気になって初めて、病人の気持ちが分かるように(笑)。
SAM
そういうことですよね。新しいことに挑戦したり興味を持ったりすると、いろいろな気づきがあり、そこからまた派生して新しい世界も広がる。それってジェロントロジー的にも、すごくいいことなんです。年齢の呪縛から解放され、気持ちも若々しくいられて、脳の活性化にもつながるわけです。
長岡
しかし、体が元気じゃないとそういう意欲もわかない。だからやはり、健康が第一ですよね。体を動かすことが大事だとみんな頭では分かっているけど、なかなか実行できない。
SAM
散歩でもいいと思うんですよね。ちょっとしたことの積み重ねが大事なんです。僕はエレベーターを待っている時によく、かかとの上げ下げ運動をやっています。この運動はふくらはぎの筋肉の強化になります。ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、鍛えることで全身の血流も高まるのでおすすめです。長岡社長にとって挑戦とは何でしょうか?
長岡
我々のグループ「EPS」は、Ever Progressing System の頭文字を取っています。進化し続ける仕組みといった意味ですね。社会貢献のために変化し続けることが我々の役割であり、それこそが挑戦です。さらに、そこに携わる人間たちのヘルスケアにも、もっと力を注いでいかなければと考えています。社員が元気じゃなければ、会社は成り立ちませんから。SAMさんにもぜひお力をお貸しいただきたいです。今度相談させてください。
SAM
はい、ぜひご協力させてください。
長岡
本日はありがとうございました。