
Interview
2024/04/01
暑苦しいほど愛ある経営を。
Interview
2023/06/01
GUEST
地球の歩き方 編集長
宮田 崇
旅をすることでフィジカルもメンタルもそして脳も鍛えられる。
宮田 崇(みやた たかし)1977年、横浜生まれ。「地球の歩き方」編集長。2001年、立教大学経済学部経済学科卒業。同年、ダイヤモンド・ビッグ社に入社。翌年、地球の歩き方編集部に配属。2017年、編集長に就任。これまで72の国と地域を訪問。コロナ禍で海外旅行が制限される中、「旅の図鑑シリーズ」「国内シリーズ」「コラボシリーズ」をヒットさせ話題になる。2022年10月より「旅と健康シリーズ」を新たにスタートさせた。
INTERVIEWER
EPSホールディングス株式会社 常務執行役員
大社 聡
大社 聡(おおこそ さとし)株式会社ミドリ十字(現・田辺三菱製薬株式会社)にて営業企画部企画課長、社長室課長などを経て退社。2001年にメビックス株式会社を起業し、2005年には同社が東京証券取 引所マザーズで上場。2013年、綜合臨床メディフィ代表取締役会長、2014年に株式会社綜合臨床ホールディングス副社長に就任。現在、EPSホールディングス株式会社常務執行役員、EPS創健科技集団有限公司董事長CEO等を兼任。
INTERVIEWER
株式会社EPNextS
髙見澤 千咲
髙見澤 千咲(たかみざわ ちさ)1999年生まれ。山梨県出身。2022年、上智大学卒業。同年4月、EPSホールディングス株式会社に入社。現在は、株式会社EPNextSに所属し、管理センター総務部 第三グループ/事業企画推進センター新規事業開発部 第三グループを兼任。
大社
宮田さんは「地球の歩き方」の編集長をされていますが、ご自身が経験した、印象に残っている旅について教えていただけますか?
宮田
初めて行った海外への旅、インドのことはいまでも鮮明に覚えています。祖母の遺品に「地球の歩き方 インド」があったのがきっかけで、大学1年と2年の間の春休みに友人と行きました。
髙見澤
何年頃のことですか?
宮田
1998年でした。現地で鉄道のチケットを買おうと窓口に行こうとすると親切そうなおじさんが「窓口は閉まっているからこっちへ来い」と。確か「地球の歩き方」にそんな詐欺に注意という情報が載っていたなと思い出し、無視して窓口に行ってみると案の定、窓口はちゃんと開いている。
髙見澤
詐欺ですか。怖いですね。
宮田
でも窓口には人が群がり列もなく、強引にかき分けて行くしかない。いつまで経っても進めないし誰も助けてくれない。チケットを買うだけでとんでもない苦労をしました。
大社
私も昔、タイのバンコクからプーケットへの飛行機でひどい目に合ったことがあります。1980年代ですね。ちゃんとリコンファームしていたのに席がないと言われましてね。でも窓口でとことん粘り、強く主張していると、なぜか席を出してくれたんです。もっともかなりの割増料金でしたが。
宮田
そういうのすごくよくわかります。
大社
日本の常識が全く通用しないんですよね。
宮田
私も日本って何て穏やかな国なんだろうと思いました。窓口に行って「青春18きっぷください」って言えばすんなり買える(笑)。
髙見澤
そもそも旅とは何だと宮田さんは考えますか?
宮田
難しい質問ですね(笑)。「旅」と「旅行」を区別して考えるなら、自分が知らなかった土地を訪れて経験したり知識を得たり楽しんだりすること、しかも自分の意思で。それが「旅」だと考えます。
髙見澤
なるほど。
大社
自分の意思が大事なんですね。
宮田
ルートや時間が決められているツアーは「旅行」。このビーチ気に入ったからあと3泊しよう、という感じが「旅」・・・でしょうか。
大社
わかりやすい定義ですね。同感できます。
宮田
お二人の「旅」の思い出やこだわりは?
髙見澤
私は野球観戦が好きで、プロ野球の各球団が本拠地にしている球場に行くのが趣味です。
宮田
ほぉ~野球ですか。
大社
球団本拠地巡りのきっかけは?
髙見澤
まず野球が好きになったのが始まりです。私、中学2年の春休みにインフルエンザになってしまって。40度の熱がある中、ちょうどテレビで甲子園の選抜高校野球をやっていて、朦朧とした状態で見ていたらある選手がホームランを2本打ったんです。あまりに格好よくて、ファンになりました。それが巨人の岡本和真選手です。
大社
WBCでも活躍しましたね。高校野球から入って選手を追いかけてプロ野球、そして球場ですか。
髙見澤
巨人ファンなのですが、ライバルも知りたいという感覚で他チームの本拠地にも興味を持つようになりました。実際に球場巡りをするようになったのは大学に入ってからですね。家族も巻き込んで、両親、おば、祖母と一緒に球場巡りをするのが私の好きな旅のスタイルです。
宮田
いいですね。いやぁ、楽しそう。
大社
私は若い頃に行った岬巡りが思い出に残っています。中学を卒業して高校に上がる前、春休みに自転車で四国一周の岬巡りをしました。友人と2週間、すべてキャンプで。
宮田
全行程キャンプなんて、若さですね。
大社
大学ではレンタカーを借りて北海道を一周しました。2ヶ月半かけて北海道の岬を制覇。途中、お土産屋さんでアルバイトをしたり。フェリー以外は全て下道で、走行距離約1万キロでした。
宮田
本格的な旅ですね。岬はどんなところが魅力なのですか。
大社
陸の先端から見る景色がどこも特徴的で素晴らしいんです。ただ社会人になってからは、旅らしい旅はあまりしなくなった。出張や旅行は頻繁に行っていますが。
宮田
球場と岬巡り。お二人とも本当に個性的な旅を経験していますね。旅のガイドブックを作っている私にも非常に新鮮に感じました。
大社
コロナが落ち着いてきて、これからの旅はどのように変わっていくと思いますか。
宮田
各自のライフスタイルや趣味に合った、型にはまらない旅が主流になっていくと思います。今もこれからもその傾向は変わらないでしょう。
髙見澤
いわゆる推し旅ですか。
宮田
そうですね。髙見澤さんや大社さんの旅のスタイルがまさに主流といえますね。
大社
「地球の歩き方」がコロナの影響で9割売上が落ちたものの、V字回復したとお聞きしました。その辺の経緯を教えていただけますか。
宮田
実はよくよく数字を確認したら9割ではなく、9割5分減でした(笑)。95%ですね。その結果、2021年1月にダイヤモンド・ビッグ社から学研グループの傘下になりました。
大社
大打撃ですね。でもそこから盛り返した。
宮田
何か企画を考えなくてはいけない。ただし緊急事態宣言で海外には行けない。そこで考えたのが東京オリンピックを意識した企画です。オリンピックを観戦しに地方から東京に来る人に向けて「地球の歩き方 東京」を、家のテレビで観戦する人に向けて「世界244の国と地域」を2020年に発行しました。結局、オリンピックは延期になってしまいましたが、なんと有り難いことにどちらも評判になり、「世界244の国と地域」はその後、「旅の図鑑シリーズ」として30タイトル出ています。
大社
今の時代に紙の情報媒体が売れるというのはすごいことですね。インターネットが普及し、スマートフォンやタブレットを旅のお供にして瞬時に情報が得られる時代に、紙のガイドブックをどのように捉えていったのでしょうか。
宮田
インターネットが当たり前になり、スマートフォンが普及し始めた当初は、紙媒体は滅びるのではないかと正直言って危惧していました。でも実際は、サイト運営者にとって当たり前になったSEO対策が、検索する人に不便をもたらすことも。こういうキーワードを入れたら上位に表示される、というSEO対策を皆さんされています。その結果、調べる側が本当に欲しい情報になかなかたどり着けない状況になっています。
髙見澤
確かにインターネットの情報は膨大ですからね。
宮田
例えばベトナムでお腹が痛くなって検索しても、スポンサーばかり上位表示され、肝心の病院の情報がすぐに出てこない。「地球の歩き方」は1時間で読め、そこに載っているURLを入れれば最短で欲しい情報が入手できます。お金をいただいて作っている本なので責任重大であり信頼性もある。紙で出す価値は十分にあると思っています。
大社
なるほど。デジタルに負けないガイドブックなんですね。
宮田
ただし、我々もインターネットは大いに活用しています。情報の宝庫ですから。あと紙媒体の弱点は双方向性ですね。「地球の歩き方」もウェブ展開していますが、SNSも活用しながら読者との双方向性を強化していきたいというのが今後の課題です。
大社
「地球の歩き方」から健康シリーズが出たそうですね。私たちヘルスケア関係の仕事をしている者としてとても興味を持っているのですが。
宮田
昨年10月に健康シリーズが生まれ、11月末には「脳がどんどん強くなる!すごい地球の歩き方」が発売されました。著者である高島明彦先生はアルツハイマーの研究の権威の方で、書籍では空間ナビゲーション機能を司る脳の一部“嗅内野”を旅で刺激し、認知症を予防する方法を紹介しています。旅はフィジカル面だけでなく、脳の健康にもいいということです。
大社
確かに旅と健康は密接に関連していると思います。旅はそれなりのエネルギーを使いますから、そもそも健康じゃないとできない。
髙見澤
心も元気じゃないと旅に行く気力も起きませんよね。
大社
先ほど岬巡りの話をしましたが、私は50歳過ぎて一時期フリーターをしていた頃がありまして、その時にお遍路の旅を体験したのです。
宮田
四国八十八ヶ所霊場巡りですか。
大社
そうです。四国一周、43日間かけて約1200キロ歩きました。もちろん岬も巡りましたよ(笑)。やはり健康じゃないと歩けないですね。私の場合、いろいろストレスを抱えてお遍路に出たのですが、1日40キロ歩くともう無心になるしかない。無心に歩き続けて、それが何日か続くと心が落ち着いてきます。旅をすることでフィジカルが強くなり、心も元気になれるという面もあると思います。
宮田
「地球の歩き方」の売上が大幅ダウンした時も、編集室は不思議と悲壮感がありませんでした。それはきっと編集メンバーは旅によってメンタルが鍛えられているからだと思っています。旅先では頻繁に瞬時の判断が求められます。冒頭のインドの話のように、予期せぬ出来事に遭遇するのも日常茶飯事ですから。
髙見澤
私は高校1年の時に初めての海外旅行でロサンゼルスに行ったんです。本当に楽しかった。その時のホームステイ先の大きな家やロサンゼルスの街並みなど、今思い出してもワクワクしてきます。こんなふうに過去の旅を思い出すことでワクワクするのも健康にプラスになっている気がします。
宮田
なるほど。ワクワク感はドーパミンの効果ですから脳が活性化されている証拠です。過去の旅の思い出も健康に一役買っている。そう考えると旅って本当に素晴らしいですね。
大社
宮田さん、今日はいい話をありがとうございました。
髙見澤
ありがとうございました。
宮田
こちらこそ、とても楽しい時間でした。