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2021/08/01
心臓疾患、眼疾患、脊髄損傷などの病気やけが、あるいは先天性障害により身体機能の一部を失い、いまだ有効な治療法を見いだせないまま苦しんでいる患者さんがいます。
こうしたアンメット・メディカル・ニーズに対し、根本治療の活路を開くものとして期待されているものに、再生医療があります。さまざまな細胞に分化可能な幹細胞を用い、機能が失われた部位の細胞や組織をつくり出して修復や置き換えを行うことで、機能の回復を目指します。
再生医療における基盤技術の一つに幹細胞の作製があります。
代表的な幹細胞は、
①受精卵から作製する「ES細胞」
②体細胞から作製する「iPS細胞」
③体組織から抽出する「間葉系幹細胞」
の3種類。
ES細胞とiPS細胞の実用化には今少し時間を要しますが、加齢黄斑変性やパーキンソン病、心臓病など、さまざまな領域で臨床研究が行われています。
また、悪性腫瘍の治療を目的とした細胞治療薬など、再生医療等製品の上市も徐々にではありますが、確実に進められています。
これまでは治療困難とされていた脊髄の損傷なども、将来的にはiPS細胞から培養された神経幹細胞による治療が現実のものとなることが期待されます。
2012年、京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、「再生医療」という言葉は広く一般にも知られるようになりました。
国も従来以上に再生医療振興に力を入れ、2014年には、薬事法が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」へと改正されたことと併せて、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を施行。再生医療の実用化を促進する制度的な枠組みも定められました。
とはいえ、世界的に見れば、日本の再生医療研究開発環境は、決して恵まれているとは言えません。欧米諸国と比べると、国の投資額には大きな隔たりがあります。日本には優れた技術があり、再生医療のシーズはiPS細胞に限らず豊富にあるのですが、十分な開発資金を得られないまま、また事業化するためのさまざまな関門を超えることができずに「死の谷」へと落ちてしまうことが少なくありません。有望な開発シーズを「死の谷」へ落とすことなくいかに育むかが、大きな課題となっているのです。
では、この課題を解決へと導くにはどうすれば良いのでしょうか?次号の後編では、日本の再生医療を花開かせるために、今どんなことが行われているのか、さまざまな取り組みをご紹介します。
イーピーエス株式会社
臨床開発事業本部モニタリングセンター モニタリング7部
東 大輔
2006年にイーピーエス株式会社に入社。医薬品の臨床開発業務に携わる。2017年より現在までイーピーエス株式会社及びEPSホールディングスの再生医療推進室に所属し、再生医療関連業務に従事している。
【お問い合わせ先:再生医療推進室】https://www.eps.co.jp/ja/contact.php