褐色脂肪細胞を用いた痩身医療

肥満とは体脂肪が過剰に蓄積した状態です。日本の肥満者（BMI≧25 kg/m2）の割合は男性33.0%、女性 22.3%とされており、特に男性は2019年までの 10 年間に有意に増加しています※1。

肥満になると、糖尿病や高血圧のほか、冠動脈疾患、脳梗塞などの重大な疾患にかかりやすくなります。肥満がもたらす経済的な負担も大きく、OECD（経済協力開発機構） の報告書によれば OECD 諸国における医療費の約 8.4%が太りすぎを原因とした疾患の治療に費やされているとされています※2。

褐色脂肪細胞は、身体に備わった発熱装置とも言われており、糖や脂肪を燃やして熱エネルギーを作り出します。褐色脂肪細胞が増えれば、基礎代謝が向上し、肥満や糖尿病の有効な予防法となる可能性があります。また、褐色脂肪細胞を体外で培養した後に移植できれば痩身につながることが期待されます。

皮膚の細胞に低分子化合物を加え、褐色脂肪細胞を短期間で簡単に作製できる技術です。細胞に遺伝子を導入しないため、細胞への悪影響や腫瘍化のリスクを大きく軽減できる可能性があります。
肥満に対して長期間の持続作用が期待でき、自家細胞による安全性の高い細胞治療※3が期待できます。
また、この技術を用いると、簡便かつ安価にヒト褐色脂肪細胞モデル（ciBAs）を作成できるため、ciBAs に様々な化合物を作用させ、褐色脂肪細胞の活性（褐色化）を評価（スクリーニング）することによって、肥満および関連する代謝性疾患の予防につながる医薬品や食品成分の候補物質を発見できる可能性があります。